カラフルキャラメル

-映画・美術・旅行など-(基本的にネタバレで好き勝手、雑に書いています)

あしたのパスタはアルデンテ(Mine Vaganti)

f:id:colorfulcaramel:20130127193801j:plain

ストーリー:トンマーゾ(リッカルド・スカマルチョ)はローマに住む作家志望の青年。実家は南イタリアのレッツェにある老舗のパスタ会社だが、兄アントニオ(アレッサンドロ・プレツィオージ)の新社長就任が決まり、共同経営者一族の晩餐会が開かれることになった。帰郷したトンマーゾは、その席上で家族に言えなかった3つの秘密を告白しようと、兄のアントニオに予告する。1つ目は経営学部と偽って文学部を卒業したこと。2つ目は家業を継がずに小説家になること。そして最大の秘密はゲイであること。だが、ディナーの席でトンマーゾが告白しようとした矢先、アントニオが先にカミングアウトしてしまう。実は彼もゲイだったのだ。一同は驚愕、父ヴィンチェンツォ(エンニオ・ファンタスティキーニ)は憤怒のあまり、アントニオに勘当を言い渡してそのまま卒倒。家族は大騒ぎになる。トンマーゾは告白どころか、ローマに戻ることもできず、共同経営者の美しい娘アルバ(ニコール・グリマウド)とパスタ工場を任される羽目に。果たして、トンマーゾの未来は…?老舗パスタ会社の将来は…?そして、一家に再び平和な日々は訪れるのか…?(以上、Movie Walkerより)
この邦題が酷過ぎ。「イタリア映画祭」上映時の邦題も『アルデンテな男たち』でアルデンテってパスタのサイコーな茹で具合や歯ごたえでしょ、人間に対する形容詞じゃねぇーって思ったり。タイトルだけ見たら『マーサの幸せレシピ』『ミラノ、愛に生きる』のようなリストランテ話やらシェフとの恋愛やらを想像したけれど、全く違ってますた...
さて、私、この映画、大好きだ!南イタリアの保守的な街でのカントーネ家の‘家族’(それぞれまさにいつ爆発するかわからない爆弾たち(le mine vaganti))の物語、ゲイに対する反応を描いた映画で「自分に嘘をつかない生き方ってなに?」「普通ってなんだ?」的なシリアスな問題を扱っているけれど、暗くならず、明るく笑わせてくれる。息子にゲイだとカミングアウトされたことを受け入れられず、ゲイは個性ではなく、病気であり、いつか治るものと思いたい&街中にこの噂が広まり、誰もに笑われているように被害妄想する両親。それとは逆に、過去に自分の夫の弟との恋愛を隠し、愛し続けている祖母は寛容で孫達の気持ちを察して、様々なアドバイスをしてくれるところが面白かったです。後半、ローマからトンマーゾのゲイ友達が家に遊びに来て、家族に自分達がストレートであるように頑張って振るまっているところが爆笑!(特にアルバの着ているドレスのブランドを当て、思わず「ステキだ!」って言ったあとに「彼女が同じドレスを持っているので...(なわけない)」&おばあさまのけげんそうな表情はお気に入りのシーン)
アルバはとても綺麗でずっと観ていたかったです(で観ていたら、だんだん鈴木紗理奈ビビアン・スーに見えてきました)。思わずアルバに感情移入して観てました。精神状態や性格に問題があると人から言われ、うまく友達と付き合えず、被害妄想入っている彼女がトンマーゾとはとてもいい感じに付き合えて(部屋にあげているし)、惹かれるのはすごく良くわかる。なのにトンマーゾはゲイでうれしそうに恋人のマルコのことを話し、惚気ているし、ツライよねーーー。海水浴場でのトンマーゾとマルコがおしゃべりしながら、いちゃいちゃ過ごしているところを複雑な表情で見つめているところは、私だったら、2人でいるところを見るのがツライっていう感情と2人を見守りたいっていうアンビバレントな感情で見てしまいそう。女の自分を好きになってもらえないのはとても残念なことだけれど、好きな人が幸せそうなのが愛おしい的な。
全てお見通しだったトンマーゾのお姉さんや昔、男と駆け落ちしてイギリスに行き、お金などすべて取られて出戻ってきた独身の叔母さんなど、ほかの家族も魅力的に描かれていて、とてもよかったです。しかし、あのなにか決意を家族の前で発表しなくてはならない瞬間って、考えただけで胃が痛くなるよなー。そして、エンドロールで流れていたNina Zilli「50mila」、Amy WinehouseNina Simoneを彷彿とさせて、スゴく好みだった!思わずくちずさんでしまう♪

●おばあさまのありがたいお言葉集(日本語はDVD字幕より):
普通なんてイヤな言葉だね
Normalia...che brutta parola.
人の望みどおりの人生になんて、つまらないわ
se uno fa sempre quello che gli chiedono gli altri non vale la pena di vivere.
過ちを恐れる必要はない
Sbaglia sempre per conto tuo.
紳士になるよりも、自分の幸せを考えなさい
I signori non c'entrano.Fanno cosi le persone che vogliono essere felici.
時にはすべてを打ち壊すことも必要よ、最初は誰もが戸惑い混乱するでしょう、でもそこから新たな道が開ける
Ma le mine vaganti servono a portare il disordine, a prendere le cose e a metterle in posti dove nessuno voleva farcele stare, a scombinare tutto, a cambiare i piani.