カラフルキャラメル

-映画・美術・旅行・お茶など-(基本的にネタバレで好き勝手、雑に書いています)

あなたを抱きしめる日まで(Philomena)

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‘The end of all our exploring will be to arrive where we started, and know the place for the first time.’
‘Oh, Martin, that’s lovely, did you just think of that?’
‘No, it’s T. S. Eliot.’
ジュディ・デンチは大好きな女優で、本作もたいへん良かったけれど(もともと滲み出る気品・オーラがすごいので、教養のない労働者階級のおばちゃんには見えない...でも下ネタ言ったり、ユーモアがあって、チャーミング!)、なんといっても、こんな酷い話ある?!ってストーリーをコメディにしあげたスティーヴ・クーガンがとても良い仕事したよ!ちなみにスティーヴ・クーガンのFilmographyを見てみたら、劇場で観ていた映画もけっこうあったけれど、あまり記憶に残っていなかった、ごめんね。「マリー・アントワネット」「ルビー・スパークス」なんて、えーっと、どこに出てたっけ?「アザー・ガイズ」「メイジーの瞳」のような長髪イメージがあるけれど、基本的に男性は短髪が好きなので(←訊かれてない)、今回の短髪スティーヴ・クーガンはかなりツボでした!
原作のマーティン・シックススミス『The Lost Child of Philomena Lee』を読むと、映画とは全く異なり、物語の殆どがフィロミーナの息子アンソニーアイルランドからアメリカに養子に出されて(実際は売られて)、マイケル・ヘスとして少年時代から成人して共和党主席法律顧問になり、そしてエイズで亡くなるまでを綴ったものになっています。特に同性愛への偏見が厳しかった共和党内でマイケルがクローゼットとして共和党のために働かなければならなかった苦悩を読むのはしんどかった。映画で描かれていたマーティンがフィロミーナに息子探しを頼まれて、どのように見つけたかの経緯は、原作の中ではエピローグのほんの数ページにしか書かれてなくて、実際はマーティンのみで、フィロミーナはアメリカに行っていないし、マーティン自身の性格など人物像は描かれていない。ガーディアン紙に載っていたマーティンの記事や原作のこの数ページの箇所を「信仰心が強く、ユーモアがあって優しい労働者階級のおばちゃんと、高学歴でエリートだが、ある政治スキャンダルに巻き込まれて仕事をクビになり、ひねくれていて、神は信じないという中年ジャーナリストの、初めは噛み合わないふたりが徐々に心を通わせ、友情が深まっていくバディもの&ロードムービー&そしてコメディ!」として脚色した脚本(byスティーヴ・クーガン&ジェフ・ポープ)がほんとに見事でした。疑似母への愛情ともとれるかも。ワシントンDCのホテルで、マーティンがフィロミーナの部屋にコンシェルジュと一緒に入るときに「Mum?」と声を掛けるところとか(家族でないと部屋の鍵を開けてもらえないのだけれど、それでも)。
私はイタリア美術史を勉強していたので、絵画の主題はキリスト教について描かれたものが多く、イタリアを中心にヨーロッパの主要な教会を巡ってきたこともあって(イタリアでは修道院経営の宿泊施設にお世話になった)、私にはキリスト教への信仰心は一切ないけれど、教会に行って絵画やフレスコ画を観ていると、信仰しているひとたちの日常を邪魔している気持ちになったりすることもあったし(鑑賞料や教会内は暗いので絵をよく観るために照らすライトをつけるための寄付が教会の資金源になっていることは間違いないのですが)、信仰心がないのにミサに参加したり、クリスマスに総本山バチカンのサン・ピエトロ広場に行って熱狂的な信者を見たりと、この映画の中で描かれているマーティンが感じていたある種の居心地の悪さに共感してしまいました(フィロミーナの十字架のネックレスに視線を向けたり、信仰心についてのふたりの会話など)。
2度目にロスクレアの修道院に乗り込むときの雪が降っているシーンの美しさよ!そしてマーティンの「お茶もケーキも要らないぞ!」って決意もよかったなぁ...誰が赦すのか?告白するのも罪、そして、隠すのも罪、では、救いがない…宗教ってなんなの?ってなりますよ。私もマーティンと同じで赦す境地にはとてもなれないと思うし、顔真っ赤にして、怒ると思う。マーティンの'Fucking Catholics.'と'I think if Jesus was here right now he'd tip you out of that fucking wheelchair - and you wouldn't get up and walk.'って台詞を言わせたのはすごいなと。
そういえば、ハープを弾く=ゲイって思考はもともとあるのかしら?なんの映画か忘れてしまったけれど、マーク・ウォールバーグが出てたやつで聞いたことがあったような。
私の頭の中で、80年代のエイズ問題で「ダラス・バイヤーズクラブ」やTV映画の「ザ・ノーマル・ハート」、カトリックとゲイだと「恋するリベラーチェ」など、どんどんいろんな映画がリンクしていって面白かったです。